学力低下は本当か?       …本当です。

    文部科学省が出した「新学習指導要領」により、次のことが進められています。

完全学校週五日制

・「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開する。

自ら考える「生きる力」を育成する。

・ボランティア活動の推進、コンピュータ等の情報手段の活用の推進を重視する。

    これらのうち、特に「ゆとり」の部分を詳しく取り上げると、

ゆとりある教育活動を展開する中で、

基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること」
(1)年間授業数は、現行より週あたり2単位時間削減
(2)教育内容を授業時数の縮減以上に厳選し、ゆとりの中で基礎的・基本的な内容を繰り返し学習し、その確実な定着を図る。
(3)中学校における選択学習の幅を一層拡大

とされています。
これは、『基礎学習の強化により勉強が苦手な子どもを減らす』という目的で打ち出されたものでしょうが、残念ながら

(基礎学習の強化)=(全体的なレベルの低下)=(学力低下)

となってしまっているのが現状です。

一体何が問題であるのでしょうか。 『中学における絶対評価と高校入試に及ぼす影響』 も含めて考察します。

1.公立学校における授業の実態

・ 小学校の担任が全教科を教えるデメリット

 一人の担任が全教科を教えることによって、児童一人一人の教科による得手・不得手を発見・指導していくことなどのメリットは大きいものです。しかし、専門分野ではない教科についての指導の弱さも、現実にはあります。
特に「中学ではどう扱われるのか」については、近隣の中学との連携が無いのか、ほとんどと言ってよいほど踏まえていません。全ての教科においてそういった研究を行うのは、先生方の負担を考えると難しいと思いますが…

・ 1年間に決められたカリキュラムを終えられない。

 特に公立の中学校の数学において多い話です。理解しにくい内容に十分時間をかけているのだとしても、補習なり別の方法を取るべきであり、計画性が無いと評価せざるを得ません。また、2〜3月にかけてものすごい速さで一方的な説明で済ませてしまう、プリントを大量に配って説明したことにする、などで“終えた”既成事実を作り上げてしまうことも実際に起こっています。理科でも、中2の2〜3月の内容が中3の4月に持ち越しになるケース、中2の終わり頃に詰めて授業を行うケースはよく見られます。
 中3には大変に深刻なことです。2月の終わり頃まで時間をかけて中3内容を扱うと、入試過去問題に手をつける時間が無く、「これで中3内容は全て終えました。明日は入試です。」などということにもなりかねません。少なくとも12月には内容を終えてもらわなくては、困ります。
 また、教科書通りの順序で進めないことも、すでに当たり前のことになっています。恐らく、内容が学期をまたいでしまわないように配慮したのがきっかけと思いますが、2期制に変わっても改めることなく定例化しています。

指導要領が変わり、これだけ内容が減ったのに、なぜできない生徒が減らないのか。
   (※ 一般に「数学3割、理科4割減少」といわれています。)

 文部科学省が意図した方向とは違い、できない生徒はますますできなくなり、できる生徒もスケールが小さくなってしまっていると感じます。確かに理数科目において、これだけ内容が削減されれば細かいところまでじっくりと説明がされる (←けい友館の授業は少なくともそうなっています) はずであり、それを生徒側がきちんと聞き取ってくれればよいのですが、そこで 「自分で必死になって勉強しなくても何とか授業についていけるはず」 という誤った解釈が導かれ、もともと勉強をしない生徒はますますしなくなり、勉強をする方であった生徒も、ものたりなさを感じずにはいられないのですが、やがてその状態に慣れていってしまいます。そして、さらに意識の高い生徒は、危機感からより一層がんばることによって、学力の差をさらに開いていくのです。

・ やる気のない先生は本当にやる気がない。

 公立学校の先生の場合、「トラブルさえ起こさなければ一生安泰。がんばってもがんばらなくても給料は一緒。」 なのですから、必要最小限しかがんばらなくても不思議はありません。もちろん、責任感や教え子かわいさにがんばっている先生もたくさんいらっしゃいます。いずれにせよ、公務員の身分保障を背景として、やる気の有無が極端に現れるケースが多いといえるのではないでしょうか。
 また、「テストはワークブックと同じ(ような)問題を出すから授業を聞いてなくても大丈夫」などの生徒の声を聞くこともあります。確かにある意味、平常の努力が一番現れる形のテストにはなるでしょうが、授業を聞かせる努力をどこまでなさっているのかなと、心配になることがあります。

・ 授業が成り立っていない(=学級崩壊)は日常的なこと

 最近はあまり話題にならなくなりましたが、生徒からクラスの様子を聞く限り、「生徒の授業中の居眠り」はまだかわいい方。わざと授業を妨害する、授業中平気で教室から抜けだす(というか堂々と出て行く)ことも少なくありません。先生方もそれを止められない、または関わろうとしないことが多く、生徒もそんな先生のいうことなどはまったく聞かないという悪循環が繰り返されているそうです。もちろん、生徒を止めようとする先生もいるのですが、単独では難しく、複数で止めようとすると生徒側も集団で行動するようになるので、問題が大きくなっていってしまう状況を生んでしまいます。学校側は「親のしつけの問題もある」することが多く、指導力低下はあまり話題に出さないことが多いようです。


2.子どもの学習時間は…

・ 世界的な比較では日本は下位層

ある資料によれば、学校外での勉強時間が、国際平均では2・8時間に対し、日本では1.7時間とする資料があります。
また、約半数の生徒が家に帰って全く勉強をしていないそうです。
インターネット上で「勉強時間」と、キーワード検索すると様々な機関の調査結果が載っています。
しかし、これらの大きな疑問点として、(インターネット上でもそれらの点が指摘されていますが)

・塾通いや家庭教師をつけている時間を含むのか、含まないのか。
・小学生・中学生・高校生などの年齢・学年設定があいまい。
・中・高・大学受験を目的としている・いないの違いが不明瞭。
・学校での定期テスト前(当然勉強時間は増えるもの)などの目的意識が高いときの調査か否か。

などがあり、状況・目的が違う点からも一概に平均勉強時間を割り出すことは難しいようです。
ただし、確実に言えることは、この10年で我々も「勉強しなくなったなぁ」と感じることであり、子供に勉強を教える仕事をしている方の大多数は、同じ感想を持っているはずです。

・ 勉強に目が向かない要因

 勉強をしなくなっている原因を一概に「コレ!」と決めつけるのは、やや無理があります。例えば、「今、勉強をがんばっても、未来の希望へとつながるとは思えない。」という世相的な背景を持つものもあるでしょうし、「電子メールに異様に時間を取られる。」のような直接的な原因もあるでしょう。

 我々が感じる一番の大きな問題は「勉強しなくても何とかなってしまう」という現状です。

「学習内容の減少」「絶対評価による成績のインフレ(みんな高くなる)」「高校入試も半数は推薦で学力試験無し」などの入試システム的な要因に加え、「習い事のスケジュールもあって居残りをさせられない」「学校の先生も体罰禁止だから別に怖くもない」「親も自分の学生時代に味わった受験地獄へ我が子を落としたくないから付属校で伸び伸びさせたい」など、環境的な様々な要因が、「勉強を少しでもしない方向に自らを導く」ことにつながっているのではないでしょうか。

3.学力低下を防ぐためにできること

・ 学校・塾任せにしない

「学校の授業さえついていけばよい」といった考え方は、もはや公立学校においては危険と言えます。あくまで学校で教えることは「最低限」のことという認識を持ち、授業についていくだけでなく、100%の理解ができるよう心がけさせてください。

また、塾や学校は「学ぶ場」であり、「覚える場」を兼ねてしまうとどうしても学習内容伝達の効率が落ちます。したがって、覚える作業はどうしても家庭学習で行うことが必要です。けい友館では、詳しく内容説明を行った上で、より効率の良い覚え方のコツを教え、その後、覚えられたか確認を行うなどのフォローをしています。

相手任せでなく、学校、塾、ご家庭のそれぞれができる限りのことを行い、互いに協力し合うことが大切だと考えます。

・ 「宿題=ノルマ」の発想を変えさせる。

「宿題やったからもう遊んでいいでしょ?」というような言葉をご家庭で耳にしたことはありませんか。
塾に行く直前になって慌てて宿題をしている姿を見かけたことはないでしょうか。(けい友館でも、授業が始まる前に慌てて宿題の問題を解いている姿をときどき目にします。)いずれも「宿題=ノルマ」という発想を持っているからそのような行動をとるのであり、そのような状態で宿題をしても、学力は上がりません。

宿題の目的は「反復と練習の手助け」です。あくまでも復習のためのきっかけであって、それさえこなせば完璧というものではありません。また、授業の進み具合によっては問題を解くような宿題を出せないこともあります。しかし、それは決して何もしなくていいのでなく、自分で自由に復習を行える機会と取って欲しいのです。

学校任せにしないためにご家庭で行っていただきたいことに、「毎日、その日に習ったことを反復させる時間を設けること」があります。集中した環境で思い出す作業を行い、ノートや教科書で確認してから宿題を行い、最終確認を行う。毎日この作業をきちんと行えば、既習内容に大きな問題が無い限り、必ず学力は向上します。

・ 「何を勉強していいか分からない=勉強が足りていない」

生徒から「何を勉強していいか分からない」といった相談をよく受けます。正確には「何から優先的に行うべきかわからない」のだと思います。
 生徒の状況や学年にもよりますが、「まず復習。次に一度解いた問題をもう一度解く。大切なことは本当に納得しているかを常に確認しながら学習を進めていくこと。」と伝えます。また「勉強はやればやるほど自分に足りないことが見えてくる。それが見つからないうちは勉強が足りていないということだよ。」とも伝えています。
勉強の方法は千差万別であり、人それぞれです。その方法を見つけるためには、とにかく動き出すことが大切です。例えそれが遠回りな勉強方法だったとしても、決して無駄にはならないはずです。

・ 子どもからの要求に線引きを行う

特に中学生ともなると独立心も芽生え、親の言うことにもいちいち反抗するものです。言うことを聞かなくなり、サジを投げたくなることもあると思います。しかし、そこで子どもの言うなりにさせてしまっては、取り返しのつかない事態になることもあります。何分にも子どもは精神的に未熟であり経験も浅いので、楽な方、楽しい方へとその行動が流されていくのは必定であり、大人が期待するような行動はなかなか取れません。(我々大人ですら、楽な方へと流されてしまうことがたくさんあるのですから…。)
 青少年の非行や犯罪も、その多くが子どもの好きに行動させていたことからエスカレートしたものと言えます。例えば「夜の外出を許す」「朝起きられずに遅刻癖がついてしまう」など、こういった生活の習慣については、ご家庭以外の誰も止められるものではありません。中学生にもなってあれこれ口を出しすぎることには問題があるとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、現状に問題があるのならば、子どもがいくつになろうが保護者がしっかりとした理念を持って「だめなものはだめだ」としっかりとした線引きを行ってあげる必要があると考えます。
 それが妥当かどうかは誰もが悩むところであり、結果論でしか判断はできません。もともと子育てに正解はあってないようなものです。

・ 生活リズムの中に勉強時間を盛り込み、守らせる

例えば、4月ごろの中3の受験生に「1日3時間は勉強しなさい」と言っても、たいてい「えー、そんなに?」という反応が返ってきます。しかし、受験直前の彼らに同じことを言ったら、「そんなんじゃ足りなくて不安になる」という反応が返ってきます。つまり、どこかで目的意識と習慣が結びつけば、苦ではなくなるのです。(もちろん、受験生には目の前に現実を帯びた目標があったり、部活動も引退していたりなど、学習を行う条件が整っていることもありますが…。)

せめてメリハリをつけて、「勉強のとき(学校・塾も含む)は勉強だけ!」と集中する習慣付けを行うだけでも、違いは出てくるはずです。特に勉強中に音楽やTVがある、しゃべりながらの環境で行っているなどのことが見られる場合、ぜひ実践して欲しい事柄といえます。

・ 親の言動が子どもの態度に出る。

 「にんじん・ピーマン・歯医者・勉強は嫌なものの代名詞」という先入観は大昔からあるものです。これは漫画やアニメなどの子ども向け番組によって子どもに植え付けられてしまうケースもありますが、親の価値観や好き嫌いが思った以上に子どもに伝わっていることもあるのではないでしょうか。

 実際、中3の生徒と志望校決定の相談をするとき、生徒が「自分の目指したいこと・夢・可能性」を言う前に、「ウチはお金無いから公立でないと…。」「私立はお金がかかるから入れる公立高校があるのならどこでもいい…。」などと言い始めるケースがとても多く、非常に複雑な気持ちにさせられてしまいます。確かに私立の費用が高いのは事実ですし、現実にそうせざるを得ない状況もあるのかもしれませんが、比較検討もせずに志望校を決めてしまうのは、あまりにも安易すぎる考え方だとそのときには伝えるようにしています。不況の反映と一口に言うのは簡単ですが、せめて色々な選択肢の中から自分に一番合ったものを選んでから種々の条件を重ね合わせるような考え方を、子どもたちにはさせたいものです。

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