1.絶対評価に切り替わり…
・ 先生側にも負担の大きい絶対評価
「絶対評価は先生の主観が大きく影響する」と考えるのは普通のことでしょう。したがって、先生に気に入られるかどうかで成績が変わってしまうという不安を持つ生徒もたくさんいます。そして困ったことに、実際そうなっている先生もいます。
ですが、多くの先生は「観点別評価」(いくつもの小項目の評価)に基づいての評価を行っており、主観だけと思われがちな評価方法だけに、できるだけ客観資料に基づいて主観の影響を無くすようにしているようです。
・ 結果的に「相対評価」の人数割合に近づけようとするケースも
「今まで行ってきた相対評価は、まったく無意味なものであったのかといえばそうではないはずであり、『5』や『1』をつけるときの人数割合も、それなりの根拠を基にしていたのだから参考にできる。」という考えの下に、相対評価の人数比に近づける形で絶対評価をつけていくという話も聞いています。
・ 成績のインフレ化
アメリカなど、以前から絶対評価をつけているところでは、「低い評価がつくのは、教える側に問題があったからではないか。」という批判を恐れ、誰もが高い評価をつけるという報告があります。
実際、この近辺の中学校でも、成績合計の平均値は上がっており、「1」がつくのは「提出物を出していない」「態度が悪い」「出席が少ない」(特に体育における水泳の授業など)といった原因が明らかな場合以外は、まずつけられません。
2.絶対評価における高校入試
・ 成績重視(私立の確約基準や神奈川県立入試)では学校内格差による不平等がある!?
今まで(相対評価)も、学校のレベルによって同じ「ALL4」でもその価値に差があるという学校間格差※がありましたが、絶対評価になってからはその格差は学校間でなく、先生間で大きく出るようになりました。
「1か5しかつけない先生」など、その先生からすればポリシーを持って評価をつけることも、学習状況を伝えると言う点ではよいのでしょうが、それが高校入試の合否判定に影響する場合、見過ごせない問題となります。「1」がつくことは、成績基準のある入試(いわゆる「オープン入試」以外)では大変に大きなハンディとなってしまうからです。
また、先に述べた「成績のインフレ」によって、誰もが好成績を持つとなれば入試時の差異も生まれにくく、入試当日の1点の重みが以前よりも増してきます。
そもそも、個人の達成度を測る「絶対評価」を他者との優劣を決めなくてはならない入試に用いること自体が、間違っているのかもしれません。
| ※学校間格差 ・・・ 例えば、できる生徒の多いA中学校と、まったくできない生徒ばかり集まったB中学校があるとします。相対評価では5段階評価の人数割合が決まっており、「5」を取れる人数には限りがあったので、A中学で「4」を取った生徒も、もしB中学校へ通っていれば、十分に「5」が取れたかもしれないと考えられます。 |
私立高校ではある程度そのあたりも加味してくれ、多少成績が基準に達していなくても、(中学の不利を考えて)基準に近い成績であればOKを出してくれたケースもありましたが、公立高校はまったく同じものとして扱ってきています。
・ 公立の合格ラインが読めない ⇒ 迷惑するのは受験生
以前、神奈川県の入試制度には「15の春を泣かせるな」というスローガンがありました。入試以前の段階(内申成績やア・テストなどの結果によって)で合否が大体分かる仕組みになっていたため、受験校決定の最終段階で危険が大きいと判断された場合は、受験ランクを下げることによって「ほぼ大丈夫」という受験をさせるようになっていました。
しかし、別の見方からするとそれは「序列化による輪切り」であって、自分が本当に行きたい学校を自由に選択できないという批判が出てきました。その結果、今日のような制度に変わり、ある程度、当日のがんばりによって逆転合格もあるようになりました。(他県では普通のことではありますが…。)
どちらの方が良い制度なのかを結論付けることはできませんが、3年間真面目にコツコツと成績を取ってきた生徒にとってはあまりありがたくなく、そして我々のような進路指導をする立場からも先が大変に読みにくい制度であると言えます。必然的に併願校(確約のある私立)を受ける必要性は、以前よりも増しています。
・ 私立推薦基準は軒並み上昇
成績のインフレは公立高校だけでなく、私立高校入試にも大きく影響を及ぼしています。特に、入学定員の半数を成績による確約で受験させる中堅レベルまでの私立高校にとっては、推薦基準の変動により、学校全体のレベルが大きく変わってしまうからです。
実際、絶対評価の始まった年に様子見のため成績基準を変えなかった高校では、絶対評価による成績のインフレのため、基準をクリアした志望者が殺到してしまったという例もあります。当然、名ばかりの成績の生徒が多いため、今までよりも実力の低い学年になってしまったのは言うまでもありません。ですから、ある程度人気のある私立高校は、強気に基準を引き上げています。
今まで、成績基準における中学校の学校間格差は私立高校内で極秘に調整(私立高校には各中学校のランク分けした資料が存在したようです)されてきましたが、絶対評価となると各先生によって評価の違いが出てきますから、そういった調節がききません。そのため各中学校に「絶対評価の分布表」を提出させ、それにのっとった調整を行うといった私立高校も出てきました。つまり、中学校から出される成績評価の信用が薄らいだものということを表しています。
・ 「信憑性の無い内申点」に頼らない方向へ ⇒ 当日の実力中心
成績のつけ方に信用が無くなったならば(←先生のつけ方という面でなく、成績合計の結果という点でです。)、今まで人数確保のため行ってきた成績による確約を見直し、入試当日の結果で判断した方が、平等で本当に実力のある受験生を入学させられるといった発想になってきます。
すでに多くの中堅までの私立高校でも「オープン入試」「フリー受験」という制度が取り入れられ、「成績は一切関係無く、当日の得点のみで合否を判断する」という動きがあります。本来は成績面で不当に低評価を受けた受験生への救済や、実力はあるにも関わらず態度面や提出物で低評価を受けた受験生を入学させたい(←高校では心を入れ替えてくれると信じてのこと)ための制度でした。まだまだ人数確保が精一杯の学校では確約による入試が主流でしょうが、知名度や人気がある私立高校からは、確約制度がなくなっていくものと見ています。